この記事にはセンシティブな内容を含みます。閲覧にはご注意ください。
目次
自殺者が増えている。若年層の自殺は深刻なの?
令和2年度は、自殺者数が11年ぶりに増加した年となりました。そんな中、子どもや若者といった若年層の自殺者数が深刻な問題となっています。
そこで、この記事では若年層の自殺がなぜ深刻なのかということについて考え、子ども達とのかかわり方についても解説していきます。
20歳代〜30歳代の死因1位は「自殺」
厚生労働省の「令和2年版自殺対策白書」によれば、15歳〜39歳までの年代の死因1位が「自殺」となっています。世界的に見ても、15歳〜34歳の若い世代で死因1位が自殺となっているのは、先進国(G7:アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、カナダ、日本)の中で日本だけです。
このように、日本における若年層の自殺は、深刻な状況であると言えます。
小学生〜高校生の自殺が過去最多
厚生労働省の「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」によれば、令和2年度の児童生徒(小学生〜高校生)の自殺者数は479人となっており、過去最多となりました。また、令和2年8月の自殺者数は前年の8月と比べて約2倍になっています。
このデータからも、若い世代の自殺はとても深刻な状況だと言えるのではないでしょうか。
20代女性の40%以上が自殺未遂歴あり
警察庁の「自殺統計」によれば、令和元年には20代女性の41.6%の方が「自殺未遂歴がある」とされています。19歳以下の女性では、36.1%の方が「自殺未遂歴あり」となっています。また、すべての年代で男性よりも女性の方が「自殺未遂歴あり」の割合が多くなっています。(総数:男性14.1%、女性28.5%)
このように、若い女性の自殺未遂も、深刻な問題であると考えます。
どうして若年層の自殺が深刻なの?
ここまでは、若年層の自殺が深刻だということを書いてきました。では、どうしてこのような状況になっているのでしょうか?子どもや若者が現在どのような状況にあるのか、考えてみましょう。
心の居場所がない
子どもや若者は、安心で安全な「心の居場所がない」のかもしれません。「学校」と「家庭」もしくは「会社」と「家庭」という世界の往復だけでは、心が休まる居場所がないのではないでしょうか。
例えば、学校では勉強のプレッシャーや先生・友人との人間関係によるストレス。家庭では親との親子関係のストレス。会社では上司や仕事に関するストレスを感じているとすれば、四六時中ずっとストレスを感じていると考えられます。そんな中で、自分が安心・安全を感じてストレスから解放される「心の居場所」が持てなくなっているのかもしれません。
逃げ場がない
子どもや若者の自殺が深刻なのは、「子どもや若者は逃げ場がない」からではないでしょうか。
例えば、学校でいじめられている場合。先生や親はよく「いじめられるあなたにも原因があるのではないか」と言うことってありますよね。そして、いじめられることがわかっていながら、それでも毎日学校に行かないといけない。これでは、嫌な思いをすることがわかっていながら、「学校に行くこと」から逃げられなくなってしまいます。
このように、子どもや若者は命を守るために「逃げる」ということが非常に困難なのではないかと考えます。
子どもや若者のSOSが届いていない
自殺を防ぐためには、「SOSのサインを見逃さない」ことが重要です。しかし、そもそもSOSのサインの出し方がわからない場合は、周りの人は気づくことが非常に難しいかもしれません。
例えば、いじめを受けている子どもの場合。親や学校の先生に相談できたとしても、親や先生が解決に向けて動いてくれなかったら、第三者の支援機関や電話相談などで自分の状況を誰かに伝えることが重要です。
このように、SOSを出したくても、誰に向かってどのようにSOSを出せばいいのかわからないのではないでしょうか。つまり、子どもや若者のSOSが、本来届くべきところに届いていないのではないかと考えます。
だからこそ知ってほしい。子どもや若者とのかかわり方とは
若年層の自殺問題が深刻化している今。子どもや若者と、どのようにしてかかわっていけばよいのでしょうか?
実は、「日頃のちょっとした声かけ」が、大きな安心感につながります。では、詳しく解説していきます。
「あなたは悪くない」と伝えてあげる
もし、「いじめられているのは、自分が悪いんだ」と落ち込んでいる場合は、「あなたは悪くない」と伝えてあげましょう。いじめは、いじめる側が100%悪いと考えます。なぜなら、いじめる側は「満たされない欲求」を、いじめという手段を通して埋めようとしていると考えられるからです。
自分の心を満たすために、誰かをいじめて良い理由はあるわけがありません。だからこそ、「いじめられているあなたは悪くない」ということを、周りのひとがきちんと伝えてあげることが重要なのです。
「逃げていい」と伝えてあげる
学校や部活などで辛い目にあっている場合は、「その場所から逃げていい」と伝えることも重要です。もし「死にたい」や「辛い」といったSOSが出るくらい深刻な状況であれば、転校や保健室登校など、環境を変える選択肢を考えてあげてもよいのではないでしょうか。
環境を変えることが難しくても、しんどい心に寄り添う姿勢や、「逃げることは悪い事ではないよ」ということを伝えるだけでも、心が楽になることが期待できます。
「いつでも話を聴くよ」と伝えてあげる
子どもや若者からのSOSを逃さないためには、日頃から「いつでも話を聴くよ」と伝えておくことが重要です。そうすれば、しんどくなって誰に相談すれば良いかわからないとき、「相談してみようかな」と思い出してもらえる可能性があります。
「私はあなたの味方だよ」というかかわり方を通して、SOSが出しやすくなるのではないでしょうか。
いかがでしたか?今回は「児童生徒の自殺が過去最多!?子ども達とのかかわり方とは」というテーマで書いてきましたが、きっとさまざまな気づきがあったのではないかと思います。
もし、周りにしんどそうな子どもや若者がいたら、「どうしたの?」と声をかけてみてくださいね。
<出典>
・厚生労働省「令和2年版自殺対策白書」
・警察庁「自殺統計」
・厚生労働省「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」
まつおけいすけ
全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラー 中学時代いじめを受け、毎日死ぬことばかり考えていたとき担任の先生に救われました。 今度は私が『心の居場所がない人たちの居場所になる!』と決め、プロの心理カウンセラーになりました。現在は福岡でカウンセリングやメンタルの講師等、心に寄り添う活動をしています。夢は『自死をなくすこと』です。