ストレス解消や作業効率のアップなど、瞑想(メディテーション)によって得られるメリットは多く知られています。心身に良い影響を与えることがわかっている瞑想ですが、具体的に身体に何が起きているのかを知らない方は多いでしょう。
瞑想(メディテーション)をすることによって「実際に姿を変える身体の器官」と聞いて、閃く方はいますか?
答えは「脳」。
本記事では、瞑想(メディテーション)が脳にもたらす影響、瞑想で脳が変わることによってもたらされる“嬉しい効果”についてお伝えしていきます。
目次
瞑想中、脳では何が起きているか
瞑想(メディテーション)で脳が物理的に変化するという事実は、近年の脳科学研究で明らかになりました。
身体の司令塔である脳の状態が変わることが、司令先である身体全体の変化につながる。一般的に知られる「瞑想の身体的メリット」とは、つまり脳へのアプローチが元になって得られる効果なのです。
なんと私たちの脳は、加齢とともに容積が減っていくことが実際の研究でわかっています。しかし、瞑想を習慣にしている人の脳は高齢でも状態が良いことも多くの研究で明らかにされています。
久賀谷 亮氏著『脳が老いない世界一シンプルな方法』によると、脳のストレスと瞑想によって緩和させることで老化のスピードは穏やかになるのだそうです。
心が乱れているときの脳
脳には「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる神経細胞の集まりが存在します。扁桃体は、脳の中で“情動反応”を司る部分。不安やストレス、怒り、恐れなどの急激な感情の動きをいつも処理してくれています。
一方、思考・理性、創造性を処理してくれているのが「前頭前皮質」と呼ばれる脳の領域です。日頃、大人である私たちは扁桃体の赴くままに「ワアー!」っと感情を爆発させることはありません。これは、感情担当である扁桃体の働きを、理性担当である前頭前皮質が抑制してくれているおかげなのです。
脳がストレスに晒され不安を感じると、扁桃体は活発になり「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンを分泌します。こうなると扁桃体は前頭前皮質の静止を振り切ってしまうため、感情をコントロールするのが難しく感じられます。
「強いストレスを感じ、感情の抑えが効かなくなる」。生きていれば誰しも経験するであろうこのような心境の時、実は脳の中ではドラマが起きていたのです。
瞑想で脳の状態が変わる「ストレス軽減するのはなぜ?」
瞑想(メディテーション)を継続して行うことで扁桃体が縮小することが、ハーバード大学の脳科学研究により明らかになりました。さらに瞑想(メディテーション)によって、思考・理性を司る前頭葉前皮質のタンパク質は増大することが同研究でわかりました。
「瞑想するとなんだかストレスが軽減される…気がする!」。これまで瞑想をした多くの方が感じていた心理的な変化は、脳の物理的な変化と相関関係にあったということです。
瞑想(メディテーション)を行う際「自分の内面を客観視する」という心構えを持たれる方は多いと思います。正しく瞑想(メディテーション)を行うことで、扁桃体の直情的な暴走をコントロールし、脳を穏やかな状態に変化させることができるのです。
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瞑想効果の“理由”を脳に探してみる
瞑想(メディテーション)によるストレス軽減。この時「脳に何が起きているのか」をお伝えしてきました。
ところで瞑想効果って、他にも様々ありますよね。本章では、一般的に知られる瞑想の効果を2つピックアップしてみました。せっかくですので、瞑想中の脳の状態についてもっと知識を深めていくことにしましょう。
瞑想をすると「記憶力が上がる」
脳には“海馬”と呼ばれる記憶力に関わる脳の部位があります。海馬はごく小さな部位ですがアルツハイマーの研究などから、比較的調査の進んでいる場所です。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
PTSDや鬱病の方の海馬は、長期間に及ぶ心理的なストレスで萎縮します。これもストレスホルモンであるコルチゾールの影響。「恐怖で萎縮した脳」と言われ、テレビやネットなどで目にしたことがある方もいるかもしれません。
瞑想家の脳の状態を観察した結果、瞑想(メディテーション)を継続することによって海馬の密度が増大することが実証されています。これによって記憶力に良い影響を与えます。
さらに、海馬は記憶の他にも自己意識や考察力を司ります。瞑想(メディテーション)することで、自己意識や考察力が豊かになり、元々ある記憶が整理される効果も示唆されているのです。
瞑想をすると「集中力が上がる」
瞑想(メディテーション)の行為そのものが “集中する練習”の要素が強いと言えますよね。継続することで「集中することに慣れたのだ」と感じる方もいるでしょう。しかし、これは単なる瞑想慣れではなく、脳が集中力を高めるために姿を変えているのです。
集中力の向上は瞑想効果の中でももっともポピュラーなものです。先にお伝えしたストレス軽減の仕組みや、記憶が整理される仕組みが複合して、集中力が高まっていそうな感じがしますね。
実は瞑想(メディテーション)で意識を特定のものに集中させている時、脳の血流は普段より増し、活発化しています。
瞑想を定期的に続けることで脳の血流は安定します。こうして脳の血行が良くなると、脳の神経細胞の集まりは成長しやすくなり、集中するのに適した脳に変化していきます。 脳が育つのですね。
染色体のキャップ、“テロメア”って何!?
近年の研究で存在が知られるようになった“テロメア”。染色体の先っぽについている保護キャップのような存在なのですが、老化の速度や個体の寿命に関係する重要な部分として、最近書籍などでも取り上げられるようになってきました。
テロメアは若い時にもっとも長く、加齢により次第に短くなっていくのだそう。テロメアが減少すると癌などの病気のリスクが上がってくると言われています。
「テロメアをなるべく長くキープすることが健康長寿の手がかりではないか」。テロメアは細胞分裂やストレスによって短くなりますが、テロメラーゼと呼ばれる酵素の働きによりテロメアが伸長することがわかっています。
瞑想のストレス緩和効果がテロメアを伸ばす
ストレスへの耐性は個人によって様々ですよね。
小さなこともくよくよと気になってしまう人がいれば、「よくあの状況を耐えられるな」と周囲に思われながらもケロッとしている人もいます。
ストレスによって分泌されるストレスホルモン「コルチゾール」は、テロメラーゼ酵素の働きを押さえつけてしまいます。そのため慢性的にストレスを抱えて生きている方は、ストレスを感じていない人よりも早期にテロメアが短くなってしまうのです。
カリフォルニア大学の研究では、瞑想を続けている人のテロメアは、瞑想していない人のものと比べ良好に保たれていることが示唆されています。瞑想によるストレス緩和の影響で、テロメラーゼ酵素がよく働いてくれているのが理由ではないかと考えられているのです。
まだまだ研究中!瞑想と脳の不思議な関係
瞑想(メディテーション)と脳の関係は、知れば知るほど興味深いものです。脳科学は今まさに黎明期と言える研究分野、日々新しい発見がされています。瞑想の効果は私たちが知らないだけでまだまだたくさんあるかもしれません。
ところで最新の研究では、瞑想(メディテーション)には他者への共感を増す作用があるのではないかと言われています。
「島皮質」という共感と思いやりを司る大脳の領域が、瞑想で活発になっているのだそう。
素敵ですよね。
他者の気持ちを敏感に読み取り、巷に溢れている何気ない幸せをめいっぱいに享受することができる脳。
これが立証されれば、瞑想(メディテーション)がもたらすと言われている健康効果のなかでも、一層魅力的な効果だと思いませんか?
出典元:書籍『瞑想する脳科学』
寿命を延ばす瞑想のメリット瞑想の効果すずきあゆみ
東京都在住。全米ヨガアライアンスRYT200修了 画家、WEBライター、料理講師など、すきなことを満遍なくやって生きています。 子供の頃から沈思黙考がすきで、瞑想が日課です。 世界史ファン、インド哲学好き。知りたい欲がいっぱいです。もっともっと勉強します!